2016/04/11
viona
映画化もされ、日本でも大人気のハリーポッターシリーズ。実は、原書の日本語訳に誤訳が多いことでも有名です。
ハリーポッターの日本語版翻訳には、誤訳があまりにも多いことで有名です。ストーリーの進行にも影響があると言われているほど。
日本語版では、翻訳者が勝手に抱いたイメージで誤訳されてしまい、ハリーポッターの原書とは全く違うキャラクターとなってしまった登場人物も多いのです。
ハリーポッターのイメージが変わるかも?
日本語版のハリーポッターを読み、映画を観た方はその違和感に気づいたかもしれません。誤訳されている部分を知れば、ハリーポッターの世界観が変わるかもしれませんよ。
主語”I”の落とし穴。
英語の主語は、老若男女に関わらず”I”です。日本語では、私・俺・僕、など様々な一人称があるので、翻訳する時にはそのキャラクターに合わせた一人称を想定しなければなりません。誤訳が起こりやすい部分です。
スネイプの一人称は「我輩」
日本語版では、スネイプの一人称は「我輩」と訳されています。ところが、原書のスネイプのキャラクターに合わせるのであれば、「私」が適当であり、「我輩」は誤訳なのではないかと言われています。
「我輩」はなぜ誤訳?
ハリーポッターの舞台は90年代の英国です。近代の世界で「我輩」という一人称を使う人はほとんどいませんよね。そのため、「我輩」の一人称は翻訳者のイメージが先行してしまった誤訳と考えられます。
猫なで声を多発するスネイプ
なぜスネイプの「猫撫で声」が誤訳とされるのでしょう?そもそも、「猫撫で声」とは、優しげで媚を含んだ声の様子を指す表現のことを言います。本当にスネイプがそんな声を出すのでしょうか?
なぜ「猫撫で声」が誤訳とされるのでしょう?そもそも、「猫撫で声」とは、優しげで媚を含んだ声の様子を指す表現のことを言います。本当にスネイプがそんな声を出すのでしょうか?
「なるほど」スネイプは猫撫で声を出した。(2巻 115P)
ハリーポッターの原書では次のようになっています。
‘So,’ he said softly,(2巻5章 62P)
この、「softly」の箇所が、猫なで声と誤訳されていると考えられます。
このシーンは、ハリーとロンが暴れ柳に被害を浴びさせたことを責めるセリフなので、猫撫で声はおかしいので、誤訳と考えられます。
スネイプのキャラクターを考慮すると、「なるほど」スネイプは静かに言った、などと訳すことが正しいと考えられます。怒りへと繋がる前の、嵐の前の静けさという感じですね。
「ああ、さよう」猫撫で声だ。(8巻202P)
ハリーポッターの原書では次のようになっています。
‘Ah, yes,’he said softly,(1巻8章 101P)
こちらも「softly」が猫なで声と誤訳されています。
これは、魔法薬学の授業で出席をとる時、初めてハリーの名を読む際のセリフです。
映画でもみられるように、スネイプはハリーにとって敵か味方かも分からない状態が長く続いているようなキャラクターです。初めての場面で猫なで声を出すのはおかしいですし、スネイプのキャラクターを考慮しても不自然です。
スネイプ=猫なで声は誤訳!
発言の場面や、スネイプのキャラクターを考慮しても猫なで声は誤訳と考えられます。翻訳者のイメージがスネイプのキャラに影響を与えてしまっているとも言えるでしょう。
スネイプの歩き方でも誤訳発見しました。クィディッチの試合の後、ホウキ置き場にいるハリーが、禁じられた森へ向かうフードを被った人物を見つけます。その人物をスネイプだ、と確信するシーンでのことです。
人目をはばかりながら、こっそりと歩くスネイプのシーンのはずが…
原書ではこう書かれている!
あのヒョコヒョコ歩きが誰なのかハリーにはわかる。スネイプだ。(1巻第13章 328P) シリアスなシーンと、ミステリアスなキャラクターのスネイプが「ヒョコヒョコ歩き」は不自然なので、誤訳と考えられます。
なぜ誤訳が起きた?
ハリーポッターの原書では、歩き方については「prowling walk」と書かれています。11章でスネイプが足を負傷しているので、その後遺症がまだ残っているという思い込みから誤訳が起きたと考えられます。実際のハリーポッターの原書には、後遺症の記載もありませんし、怪我から3ヶ月が経っているので不自然です。
人目を避けているこの場面では、「prowling walk」は「忍び足」などと訳すのが妥当と考えられます。
ハリーポッターシリーズ、『賢者の石』でのワンシーンです。ハリー・ハーマイオニー・ロンたちが「スネイプが賢者の石を今夜奪うに違いない!」と話し込んでいるシーン。後ろからいきなりスネイプが現われて声をかけるという場面です。
日本語ではこう誤訳されている!
「やあ、こんにちは」スネイプがいやに愛想よく挨拶をした。(1巻第16章 393P) 自分のことを話しこまれているシーンなのに、愛想の良いスネイプ。映画でもこんなシーンはありませんでした。冷静沈着なスネイプのイメージとはかけ離れているので、これも誤訳と考えられます。
原書ではこう書かれています
‘Good afternoon,’ he said smoothly.
Good afternoonの部分を直訳しすぎて明るいイメージを払拭できずに、smoothlyの部分をいやに愛想よくと誤訳しています。スネイプのキャラクターを考慮すると、このセリフは嫌味ったらしくすらすらと発言したと想定できます。
日本語版ハリーポッターの全シリーズを訳した松岡佑子さん。この方、本業は通訳で、ハリーポッター以前に小説を翻訳したことはないそうです。
ハリーポッターの版権を獲得したのが松岡さんの会社だったので、彼女がハリーポッターの翻訳をされたそうですが、通訳と翻訳というのは違う領域の仕事なのかもしれません。
また、ハリーポッターの作者JKローリングさんが、徹底した秘密主義者ということも関係していそうです。ハリーポッターのキャラクターが翻訳者に分かりづらく、物語の伏線を意図した翻訳が出来ないということもあるようです。
スネイプ先生の本性も、最後の最後まで隠され続けていましたよね。
ハリーポッターの再訳を願う声も
ハリーポッターシリーズの日本語訳を、改めてプロの翻訳者によって訳して欲しいという声も多数上がっています。ストーリーの全貌が明かされた今ですし、より良い日本語訳としてハリーポッターの世界が描かれることも期待出来ますよね。
ハリーポッターの日本語訳の誤訳についてご紹介しましたが、いかがでしょう。スネイプのイメージが変わったのではないでしょうか?映画化されたおかげでハリーポッターの世界観が分かりやすくなっていますが、日本語訳されたハリーポッターの小説だけでは分かりにくい部分も多かったと思います。どんな部分が誤訳されているのか再認識し、改めてハリーポッターの世界観を楽しんでみて下さいね。
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