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社会派ミステリー作家・貫井徳郎のおすすめ作品10選!

これまでに数多くの作品を輩出してきた社会派ミステリー作家の貫井徳郎さん。貫井徳郎さんの作品はイヤミスが多いですが、ついつい引き込まれてしまう面白さがある物語ばかりです。今回は、そんな貫井徳郎さんの作品の中からおすすめを10作品紹介します。

貫井徳郎のプロフィール

  • 本名(ふりがな):貫井徳郎(ぬくいとくろう)
  • 生年月日:1968年2月25日
  • 現在年齢:52歳
  • 出身地:東京都
  • 活動内容:推理作家
  • 家族構成:妻

子供の頃から本好きだった

貫井徳郎さんは、小学生の時に本の面白さに気付き、それ以来、ミステリーを中心に膨大な量の本を読み漁っていました。一人の作家の作品を全て読破するということを繰り返していたそうです。また、ミステリーだけではなく、SF小説などにのめりこんでいた時期もありました。このような読書体験が、後の貫井さんをつくっていくことになります。

自分で書き始めたのは高校時代

貫井徳郎さんは、もともとは読む専門でしたが、コンテストの賞金目当てで執筆を始めました。江戸川乱歩賞などは賞金がなかった時代で、横溝正史賞は賞金50万円でした。その50万円がきっかけで書き始めた貫井さんですが、次第に、書くことにのめりこんでいきます。

1993年に作家デビュー

コンテストの予選を通過することはありませんでしたが、執筆することが楽しくなっていた貫井徳郎さんは、不動産会社に就職するも、作家になるという夢も捨てていませんでした。1992年、24歳の時に不動産会社を退職し、翌年、失業中に書いた「慟哭」が第4回鮎川哲也賞の最終候補作となりました。受賞は逃しましたが、審査員と編集者に評価され、この作品が刊行されて、作家デビューとなりました。

貫井徳郎の作品の特徴とは?

次に、貫井徳郎さんの作品の特徴を見ていきます。また、たくさんの作品からどのようにして、読むべき作品を選ぶかについても確認します。さらに、最新作「悪の芽」についても解説します。

貫井徳郎はイヤミスが得意

読んだ後に嫌な気分が残ってしまうミステリー作品の事を、「イヤミス」と言います。イヤミスは深く考えさせられる作品でもあり、ついつい読みたくなってしまうような中毒性があります。貫井徳郎さんの作品の多くも、そのイヤミスであると言えます。そのような嫌な読後感が持ち味の作家です。

たくさんある作品から選ぶ方法

貫井徳郎さんの作品はたくさんあります。その中から自分好みの作品を選ぶ方法としては、短編か長編といった作品のタイプで選ぶほか、メディア化されている作品で選ぶなどの方法もあります。

また、文学賞をとっている作品で選ぶ方法や、デビュー作など、執筆された時期で選ぶ方法もあります。短編や映像化された作品を選べば読みやすく、デビュー作にはその作家の荒削りな本質が潜んでいます。何を重視するかによって、選び方を決めましょう。

最新刊の「悪の芽」にも注目

「小説 野性時代」で連載されていた貫井さんの「悪の芽」の単行本が2021年2月26日にKADOKAWAから出版されます。世間を震撼させた無差別殺人事件の後、犯人は自殺という展開の裏側にあった、衝撃の真実が明らかにされるという物語です。現代の「悪」を活写した、貫井ミステリの最高峰との呼び声高い作品です。

貫井徳郎のおすすめ作品10選

この項では、貫井徳郎氏のお勧め作品を10作紹介します。様々なタイプの作品を挙げていますが、文章のタッチや読後感、テーマなどを解説していますので、作品選びの際に役立てて下さい。また、文学賞の受賞作品や映像化作品は、その情報も記載していますので、そこから選ぶこともできます。

慟哭

連続幼女殺人事件をめぐって警察内部で生じた複雑な状況に、宗教団体が関わり、その後の事件の行方が描かれた作品です。貫井徳郎氏のデビュー作です。テンポよく進むストーリーの中で、人間の心の叫びややるせなさを、巧みな構成と筆力で描いた長編です。

ミステリーとしての完成度が高いのですが、読みやすい文体で心理描写が鮮やかなので、ミステリー初心者にもお勧めです。デビュー作にして、代表作のひとつに数えられます。

殺人症候群

この作品は、貫井氏の症候群シリーズの完結編です。警視庁内の捜査課が表だって動けない事件を処理する特殊チームで活躍する人々の様子を描いた内容です。重大な犯罪を犯しながら、十分な罰を受けることなく社会復帰した者に、遺族の代わりに復習を代行する職業殺人者が描かれています。復習の是非がテーマの作品です。

プリズム

小学校の教諭の女性が、自宅で、他殺か自殺かはっきりしない状態で亡くなっていたところから物語が展開していきます。登場人物4人それぞれの視点で事件の解明へと向かっていきます。タイトルの「プリズム」が示す通り、光が屈折するかのごとく、複数の登場人物が犯人を探していくことで、事件究明の過程が幾重にも紡がれます。ミステリーというジャンルへの根源的な問いを含んだ異色作です。

灰色の虹

この作品は、冤罪によって人生を台無しにされた男が復讐していく物語です。冤罪がどのようにしてねつ造されていくのかが描かれ、無実の罪で裁かれた人のことを思い、感情移入できます。人間の絶望と孤独が描写され、主人公が罪を犯してでも手に入れようとしたものは何だったのか、予想外の結末が待っています。

微笑む人

不可解な理由で妻子を殺害した男の事件を本にしようと考えた作家が、事件の真相に迫っていく内容です。貫井氏お得意のイヤミスであると言えます。読み進めるにつれ、ページを繰る手が止まらなくなり、漠然とした不安に包まれ、モヤモヤしたまま終わってしまう作品です。松坂桃李主演でドラマ化されています。

被害者は誰?

この作品は、4編からなる中編のミステリーです。頭脳明晰、容姿端麗のミステリー作家・吉祥院慶彦が難事件を解決していく、本格推理小説の傑作です。コミカルな展開でテンポよく読め、通常の、重いイメージの貫井作品とは違う印象です。ほど良い長さということもあり、楽しく読み進められる作品です。

追憶のかけら

この作品は、事故で愛妻を失い、失意のどん底にいる大学講師が主人公です。絶望を乗り越えて名声を上げるために、ある作家の自殺の真相を解明するために調査に乗り出し、様々な悪意に翻弄されるという内容です。

作家の自殺と主人公がハマる罠という二段構成と、トリックの応酬が見どころです。貫井氏お得意のイヤミスは影をひそめ、スッキリとした終わり方になっています。イヤミスが苦手な方にもお勧めです。

後悔と真実の色

捜査一課のエース西條輝司が、若い女性を殺害していく殺人鬼を追う物語です。主人公の西條輝司を取り巻く複雑な人間関係なども描かれた、読みごたえのあるイヤミスです。心理描写が濃く、どっしりとした読了感を得ることができます。続編が気になる読者が多いのもうなずけます。第23回山本周五郎賞受賞作品です。

宿命と真実の炎

この作品は「後悔と真実の色」の続編です。警察官が刺殺された事件について、犯人は冒頭から明かされています。捜査小説であると同時に犯人側の視点を描く、倒叙形式が合体した、凝った構成になっています。

裏切りの卑劣さと悲しさがテーマです。後半の予測不能の展開と貫井氏らしい、先の見えないラストが見どころです。前作を読んでから、こちらを読むのをお勧めします。

乱反射

この「乱反射」は、様々な人々の身勝手な行動から、不幸な事故が起こってしまうという、深く考えさせられる内容です。無意識に行っている、モラルに反する些細な行動が連鎖して、悲劇が起こる様が描かれています。600ページと長めですが、読みやすいタッチであり、貫井徳郎作品が初めての方にもお勧めです。第63回日本推理作家協会賞受賞作品です。また、2018年に妻夫木聡・井上真央主演でドラマ化されています。

映像化された貫井徳郎作品

最後に、映像化された貫井徳郎作品を見ていきます。貫井作品は、重厚な内容ゆえに、映像化に際してもこだわりが感じられます。知名度が高い作品で、特にスタッフ、キャストが豪華な作品を挙げています。

「愚行録」

直木賞候補にもなった「愚行録」が映画化され、2017年に公開されました。一家殺人事件の真相に迫る週刊誌の記者・田中を妻夫木聡が、田中の妹・光子を満島ひかりが演じました。貫井徳郎氏は映画化は意外だったそうですが、作品の出来上がりには満足しているようです。また、この映画は、第73回ヴェネツィア国際映画祭にて正式上映されています。

「微笑む人」

「微笑む人」は2020年にドラマ化され、テレビ朝日系で放送されました。妻子を殺害した銀行員を松坂桃李が、事件を追う記者を尾野真千子が演じています。「アンフェア」シリーズの原作者である秦建日子氏が脚本を手掛け、映画「呪怨」、「パラサイト・イヴ」で知られる落合正幸氏が演出を担当しました。独自の結末など、ドラマオリジナルの要素も盛り込まれています。

貫井徳郎の世界を満喫しよう

作家の貫井徳郎氏の作品について調べてみました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。貫井氏はその独特の作風で、ミステリー作家として確固たる地位を築いています。

多くの作品の中から、自分好みの小説を選べるようになり、彼の読者として貫井氏の活動を追いましょう。映像化作品や文学賞なども作品選びの参考にし、合わせて楽しめば、よりいっそう貫井氏の世界を満喫できます。

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