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ファラリスの雄牛の実物はあるの?拷問器具として漫画や映画に登場!

ファラリスの雄牛という伝説の拷問器具をご紹介します。この拷問器具は文字通り牛の形をしています。見かけとは裏腹に、語り継がれる拷問器具の中で上位に位置する残虐さを持っています。今回は、そんなファラリスの雄牛についての概要を徹底解説します。

ファラリスの雄牛とは?

ファラリスの雄牛は、古代ギリシャで作られた拷問器具です。

見た目はただの大きな真鍮製の牛の像にしか見えませんが、その実態は恐ろしい拷問を行うために作られた道具なのです。

 

外観はユーモラスな雄牛の姿をしていて、かわいらしくすらあります。しかしそのイメージとは裏腹に、内部には罪人を徹底的に苦しめて最後には命を奪う恐ろしい仕掛けが用意されています。

 

拷問具とされていますが、実際は何も喋ることもできず、ただ苦しめられるまま死に至るしかなく、拷問具と言うよりも処刑具と言ったほうがより正しいと言えるでしょう。

僭主ファラリスの要望に応じてペリロスが製作した

今から約2600年前、紀元前6世紀の古代ギリシアのシチリア島アグリジェントにファラリスという僭主がいました。ファラリスは目新しい処刑法を取り入れたいと思い、職人のペリロスに新たな拷問器具を製作を依頼しました。ペリロスは雄牛の形をした器具を作り、まるで楽器のように内部の音が響くように設計しました。

 

なお僭主とは古代ギリシアにおいて当時の貴族の支配体制とは無関係に、実力をもって非合法で地方を支配した首領のことを指します。

 

僭主は暴力を持って支配した者が多かったようで、このような非人道的な拷問器具を作らせて使用したファラリスも暴君のような存在だったと考えられます。

ファラリスの雄牛の伝説を紹介

ファラリスの雄牛を作らせた僭主ファラリス、製作した職人のペリロス、その後のファラリスの雄牛によって殺されたとされる人々の伝説について記述します。

職人ペリロスの伝説

ファラリスは、この拷問器具の効果を製作者であるペリロス自身が試すように命令しました。

その命令が罠だとは考えもしなかったペリロスは、言われた通りに真鍮製の雄牛の中に入って調べはじめると、ファラリスは拷問器具の蓋を閉めてペリロスを閉じ込め、火を点けてしまいました。

 

熱さで悶え苦しむペリロスの叫び声はまるで牛の鳴き声のように聞こえ、ファラリスは作ったペリロス自身でその効果を確かめることとなりました。

 

ペリロスは製作した自分自身がこのファラリスの雄牛の最初の犠牲者となってしまったのです。

ローマ人の伝説

この処刑道具が使用された多くのキリスト教の殉教者がいたとされます。

キリスト教の伝説的な聖人、聖エウスタキウスは、ローマ帝国第3代皇帝ハドリアヌスによって、妻子と共にこのファラリスの雄牛で炙られました。

 

また、聖アンチパスも92年、ファラリスの雄牛によって炙り殺されました。彼は第11代皇帝ドミティアヌスがキリスト教徒を迫害していた時の、小アジア(今のトルコ)の都市ペルガモンの司教でした。また小アジアでは最初のファラリスの雄牛による殉教者でした。

 

ファラリスの雄牛はその後も2世紀に渡って使用されました。タルススのペラギアは、ローマ皇帝ディオクレティアヌスによってこのファラリスの雄牛であぶられた287人のうちの一人と言われています。

ファラリス自身も犠牲になる

後にファラリスは僭主の地位を奪わます。その時に彼自身もこのファラリスの雄牛の中に入れられて焼き殺されてしまいました。

ファラリスの雄牛を作らせた彼自身が、この雄牛の最後の犠牲者になったと伝えられています。

 

ただしこれは前述の後の時代の犠牲者となったローマ人の伝説と食い違うので、彼が作らせたファラリスの雄牛の最後の犠牲者が彼自身であり、その後に同じような拷問器具が地中海一帯に広まったということなのかもしれません。

焼いた後の骨はブレスレットにされた

ファラリスは雄牛を、煙が芳香の雲のように立ち上る設計にさせました。

中の死体は輝く宝石のような骨として残り、ブレスレットの素材として使われたと言われています。

 

現実でも遺骨を宝石として使えるようにするサービスがあるようで、骨を高温で焼くのは同様ということで、根拠のない話ではないのでしょう。

 

しかし大切な故人ではなく処刑した罪人の骨をアクセサリーとして用いるのは、日本の戦国武将の織田信長が敵将の頭蓋骨を装飾して眺めて楽しんだという伝承と同様に、現代人からすれば悪趣味な行為に感じられます。

本当にあったのかどうかは不明

このように様々な伝承が残っていますが、ファラリスの雄牛が使用された明確な証拠の記録が無いため、実際には罪人を脅して自白させる目的で使われたのではないかと言われています。

また一説では晩餐会にも用いられたとされ、人肉が焼ける匂いをハーブの香りでごまかしたとも言われています。

ファラリスの雄牛は拷問用だけでなく娯楽用としても使われた器具なのかもしれません。

ファラリスの雄牛の使い方

ファラリスの雄牛がどのような構造になっていて、どのように拷問に使われたのかについてこれから記述します。

空洞で楽器のような仕掛けになっている

ファラリスの雄牛は真鍮で出来ています。体に付いている扉の中は、人間が入れる広さの空洞となっています。

牛の頭部には複雑な筒と栓があって、口の箇所には換気口がありました。

 

頭部にある複雑な管は、中にいる罪人の叫び声の音を別の音に変えさせる効果があります。

中の罪人が人間が苦痛のあまり悲鳴を上げると、その声は筒と栓を通って別の音になります。

楽器のような仕組みになっているということです。

 

中の罪人が熱さに苦しんで叫び声を上げると、外の人間は実際の雄牛が鳴き声を上げているような音を聞いて楽しむことができたのです。

罪人を中に入れて熱する

ファラリスの雄牛の中に罪人を閉じ込めて下から炎で加熱すると、内部の温度は450度にまで達します。

 

火事や火あぶりの場合は煙にまかれてすぐ窒息死するため、苦しみが長い時間継続するということは無いらしいのですが、このファラリスの雄牛は煙が出ないために中の人間が窒息することがなく、焼死するまで意識を失うことがありません。

そのために死ぬまで長時間、苦痛を与え続けることになります。

熱い空気から逃れるために、必死に呼吸をすると、それが管を通って牛のような音に聞こえることになります。

 

例えると人間を死ぬまで意識が確かなままに、オーブンの中で焼くような刑罰だと言えます。

本当にその通りに動作したのかは疑わしい

しかし、ディスカバリーチャンネルの番組でこのファラリスの雄牛を検証してみた所、当時の金属の質や技術力では人を焼き殺す程の温度上昇は不可能と判断されました。

器具の実在性には疑問があるということになります。仮に実在しても、処刑ではなく別の目的に使われたのかもしれません。

ファラリスの雄牛が登場する作品は?

ファラリスの雄牛が登場する漫画や映画をご紹介します。どの作品でもファラリスの雄牛がインパクトのある処刑器具として使われ、ファンに強い印象を残しているようです。

漫画『嘘喰い』

『嘘喰い』は週刊ヤングジャンプに連載されていた、命を懸けたギャンブルを題材とした頭脳戦漫画です。いわゆるデスゲーム物ですね。

この作品の中でファラリスの雄牛が出てくるのは雄牛の子宮編です。

 

ルールはストップウォッチを使ったゲームで、参加する3人のうち2人が出題者と回答者になって、出題者はストップウォッチを開始・停止を行い、回答者はそのストップウォッチを見ずに体内時計だけで何分何秒経ったかを当てると言ったルールです。

これを3組分繰り返し、最も誤差の大きかった回答者が、3組の誤差の合計タイムだけファラリスの雄牛の中で焼かれてしまいます。

ただし最も誤差が少なかった人は焼くのを実行せずにその誤差タイムを持ち越して(キャリーオーバー)、また3組の勝負を始める判断をすることもできます。

 

こういったルールで、3人のうち2人がグルでサインを送るといったイカサマをしたり、残り1人がそれを逆手に取ったりと言った頭脳戦が繰り広げられるというストーリーです。

 

このゲームでは勝者は焼かれるのが1分だけで済んだために生き残り、負けた2人はそれぞれ6分8秒、12分40秒焼かれて死んでしまいます。実際の所、どのくらい耐えられるものなのでしょうか。

漫画『たとえ灰になっても』

『たとえ灰になっても』はヤングガンガンに掲載されていたデスゲーム物です。 命を失った男たちが美少女の姿に変えられて別世界で復活し、ゲームの勝者として生き残れば賞金を得て元の姿に戻って復活できると天使クロエルに言われ、生き残るために戦うといった話です。

 

かわいらしい絵に反した非常にグロテスクな描写が多い作品で、作者が夭折されたことでも話題になりました。まさかファラリスの雄牛の呪いの生だとは思えませんが、猟奇的な内容とその死を関連付けるようなネットの書き込みも見受けられました。

 

ファラリスの雄牛はクロエルが最も気に入っている処刑器具として登場し、山田というキャラクターがゲームに負けた罰として使用されます。焼かれて行く様が克明に描かれていて、ファラリスの雄牛の漫画ファンの間での知名度は、この作品で上がったと言えるのではないでしょうか。

映画『インモータルズ 神々の戦い』

古代ギリシャを舞台に、人間たちとオリンポスの神々が共に戦うアクション映画です。

勇者テセウスが悪の王ハイペリオンを倒す物語で、テセウスに味方する巫女パイドラを救うため、身代わりの巫女3人がファラリスの雄牛で焼かれて死んでしまいます。

焼かれる時に縛られてチューブを咥える描写がありますが、外から声が良く聞こえるように配慮されているのでしょう。

 

それ以外にも残酷な描写が多い作品となっていて、そういったグロテスクなシーンのある映画が好きな人にはおすすめかもしれません。

ファラリスの雄牛の実物は?

ファラリスの雄牛が存在するのかどうか、また楽器としてはどのように思われているのかについて記述します。

実物は存在しない

ファラリスの雄牛の実物は、最後の犠牲者の僭主ファラリスを処刑した後、海に捨てられたと言われているようです。

最初に作られたオリジナルのファラリスの雄牛は存在しないのでしょう。しかしその後、ローマ人の殉教者たちに使用されたと言う伝承があることから、複製された可能性はあると言えます。

しかしそれらも見つかって無く、あいまいな記録しか残されてないことから、実物は残っていない、が定説になっているようです。

楽器との関連性

日本ではなじみの無さそうなファラリスの雄牛ですが、楽器のような機能があるからか、ネットではネタにもされています。インターネット掲示板では「文化祭でファラリスの雄牛っていう楽器担当になった」というスレッドがあるくらいなので、知っている人は知っているのでしょう。 そこでは「アツくなれる楽器」と書き込まれていたり、上で紹介した『嘘喰い』のネタが書かれたりといった反応があります。

 

ファラリスの雄牛は海外の画像サイトでは多く目につくのですが、日本でも漫画や映画で題材にされていることから知名度が高まってきているのかもしれません。

焼かれる拷問として有名なのはカイジの焼き土下座!

日本において身体を金属の器具で焼かれる拷問として最も有名なのは、漫画『賭博黙示録カイジ』に出てくる焼き土下座でしょう。

主人公のカイジにゲームで敗北した利根川幸雄がその責任を取るために、高温に熱した鉄板の上で10秒間、土下座をさせられるという拷問です。

ファラリスの雄牛のように殺されるわけではありませんが、大やけどをするのは確実であり、これを命じた利根川の上司の兵藤和尊会長の非人道さを強く印象づけています。

 

ファラリスの雄牛と焼き土下座の最大の違いは、ファラリスの雄牛は閉じ込められて強制的に焼かれるのに対し、焼き土下座は自分の意志でけじめとして行われることです。

ただしオプションとして土下座強制機という器具もあり、拒絶する者に対してはこれで体を固定をして強制的に土下座をさせてしまいます。この器具を併せれば焼き土下座はファラリスの雄牛と近い構造になると言えるでしょう。

 

利根川はこの拷問を土下座強制機を使わずに12秒やり遂げたことで、彼の語る人生訓と共に悪役ながら高い人気を博すキャラクターとなりました。番外編『中間管理職トネガワ』では主人公にまでなっています。

 

なお実写映画『カイジ 人生逆転ゲーム』ではこの焼き土下座は再現されていません。香川照之が怪演する利根川幸雄が焼かれる様を実写で観たかった人は多いと思いますが、残酷なシーンがあるとPG12指定などになるために避けたのでしょうか。

人間を金属の器具で生きたまま焼くという行為が、それだけ残酷であることの証と言えると思われます。

ファラリスの雄牛は幻の処刑器具

ファラリスの雄牛はその実在性には疑問がありますが、ユーモラスな牛の姿に反してその中で人間を長時間苦しめながら焼き殺し、その間の悶絶の声を楽器の音として楽しむという、非常に悪趣味で非人道的な仕様です。その強いインパクトから今の時代まで創作のモチーフにされています。

 

日本では人間を焼き殺す拷問はカイジの焼き土下座の方が有名だと思われますが、海外にこういった伝承があることを知っていると話のタネになることもあるでしょう。

このような伝説がいかにして生まれたのか、想像を巡らせてみるのも楽しいことかもしれません。

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