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    ヒミズではそれまでのギャグ漫画から一変、ディープな方向にシフト

    2012年に実写映画化もされたヒミズの原作漫画。作者の古谷実さんがそれまで描いていたギャグマンガ路線とは打って変わって、人間の暗い部分を描いた本作品は、読み手によっては衝撃を受けた人も少なくないのではないでしょうか。見てない方は漫画ヒミズ要チェック!

    漫画ヒミズ本編ストーリーのあらすじ

    原作漫画ヒミズ第1巻の表紙絵の人物は主人公「住田祐一」

    漫画ヒミズの主人公、住田祐一「すみだ ゆういち」(15歳・中学3年生)はどこか陰気臭くて、
    人と群がるようなタイプではありませんでした。

    そんな彼の願いは「普通の人間」として真っ当に生きるということ。

    彼の価値観によれば、「特別な人間」というのは何者かに選ばれた人間であり、
    ほとんどの人間は「普通の人間」としてなんでもない一生を送るということ。
    自分もその例に漏れない普通の人間であると考えていて、彼の少々歪んだ正義感は、
    自分は「特別な人間」であると思い込んでいる、普通の人間が許せないのでした。


    両親は離婚しており、母親と2人川沿いで貸しボートやを経営しながら生活していた主人公。
    しかしある日のこと、母親が男を作って駆け落ちし家を出て行ってしまいます。

    その上家に突然ヤクザがやってきて、父親には莫大な借金があることが発覚。

    謀らずも”特別な両親”を持った少年の日常は、実の父親を自らの手にかけることで、
    皮肉にもさらに普通な人生とはかけ離れていくことになります。

    「特別な人間」となってしまった自分を、半ば投げやりになりながらも受け入れざるを得ず、
    残りの人生を悪い奴を殺すという自分の正義のために使う決意をします。


    そんな主人公の、葛藤を描いた物語がこの漫画ヒミズです。

    原作漫画ヒミズは実写版で映画化された

    映画版ヒミズ

    漫画が原作であるヒミズは、新宿スワン等の監督としても知られる園子温監督によって2012年に実写映画化されました。
    原作漫画とは違った設定で描かれているようです。

    映画版ヒミズのメインキャストは
    主人公住田祐一役:染谷将太さん
    ヒロイン茶沢景子役:二階堂ふみさん


    原作漫画ヒミズは2001年よりヤングマガジンで連載開始。
    単行本は全4巻。
    ギャグを封印した本作品の帯には「笑いの時代は終わりました・・・これより、不道徳の時間を始めます」というコピーが。
    コピーからして既に何かしらの闇を感じますね

    映画ヒミズ予告編

    映画ヒミズ 本編抜き映像

    主要な登場人物である茶沢と夜野、そして化け物

    漫画ヒミズを語るうえで外せないキャラクター+α


    茶沢景子(ちゃざわ けいこ)
    物語のヒロインである茶沢は住田のクラスメイトで、学校では地味な存在。
    住田と接するうちに彼の歪んだ正義と、その根本にある真面目さに惹かれていく茶沢。
    そんな彼の奥深い部分を感じ取ってしまった茶沢は、彼を放っておけなくなり、
    どうにか救いたいという思いがどんどん強くなっていきます。


    夜野正造(よるの しょうぞう)
    住田の親友、夜野は住田とは違い楽天的で、平気で人の物を盗むような性格。
    住田とは相反する性格の持ち主ですが夜野と住田は親交が深く、本音をぶつけ合える間柄。
    作品中では借金に追われた住田を夜野が自分の特技を活かして、命がけで助けようとする場面があります。
    夜野自身、住田に自分にはないブレない芯のようなものを感じ取り、それが魅力に映っていたのだと思います。


    そして度々登場していた化け物。
    目立ったセリフはないのですが要所要所登場しては、不気味な印象を与えていました。
    住田には当初から化け物が見えていたようで、結局最後までその正体はわかりませんでしたが、
    複数の人間が見ていたことから、個人の妄想のようなものではないようです。
    しかしこれが死神のように、何かしら別次元の存在を示すものなのか、
    極限の感情を具現化した、存在しないものなのかはやはりわかりません。

    あるセリフから読み取る、主人公の価値観に対する評価&解説

    映画ヒミズの1シーン

    漫画でも主要な場所である住田の自宅と思われます

    主人公が言った「この世で一番ずーずーしい事は人の命を奪う事だろう?」というセリフ。

    ここから彼を支配している価値観が見て取れるように思えます。

    一言で言うなら他人に迷惑をかけないことということだと思いますが、
    それは例えば電車の中で大声で話すなどという単純な類ではなく、
    人が目障りなだと感じることをするなということではないかなと思います。

    だから「普通の人間」が「特別な人間」ぶっていることも許せないと感じてしまう。
    夜野のスリという行為も当然もってのほか。


    その究極が人殺しなだけなのであって、ある種純粋過ぎる彼にとっては
    極端なことを言えば、他人との干渉そのものが許せない行為と感じてしまっていたのかもと感じました。

    人は多くの人と関わって様々な経験をすることで自分に対する受容や認識を深め、
    自分の価値を磨いていくことが人生の1つかと筆者は思うのですが、
    ある種彼なりにそれを全うしているようにも見えるし、
    追い込まれての選択だったかもしれないけど、自分が手にかけて殺すという
    安直な方向へ行ってしまった不器用さが彼の魅力なのかなやっぱり。

    ヒミズで方向転換した古谷実漫画の感想

    映画ヒミズの1シーン

    これまでの古谷実さんといえば、「行け!稲中卓球部」に代表されるように、
    ギャグ漫画という印象しかありませんでした。


    筆者は漫画ヒミズを単行本で読みましたが、
    人の闇にフォーカスした、ギャグと真逆のこの漫画に当時ハマりました。
    読み終わった後、「自分はどこの誰だっけ?」みたいに、
    一瞬自分を見失うほど、強烈に引き込まれた記憶があります。


    今でこそ、人はみんなそれぞれの人生の主役だと考えられますが、
    この漫画を読んだ20代前半の頃は、自分も特別な人間だと思っていた気がします。
    良くも悪くも、自分にも何かが起こる。
    そんな安易さも漫画ヒミズに引き込まれた理由かもしれません。


    この記事を書いたら古谷実漫画が懐かしくなりました。
    大人になってから漫画を読むことが減ったので、
    これを機に彼の最近の漫画に手を伸ばしてみようと思います。

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