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最終回まで超人的に突っ走った伝説級法廷ドラマ『リーガルハイ』

リーガルハイはドラマ史に残る名作です。初回から最終回まで、様々な面で見事な緩急を見せ、最終回一話前で依頼人達たちの心を変えさせ、決戦に持ち込んだ神業、そして最終回での逆転劇。一見すると暴走。けど実際はインターバルなリーガルハイ。一体リーガルハイは何が凄いのか?

『リーガルハイ』とは

『リーガルハイ』
2012年フジテレビ系列で放送されていたドラマ。金儲け主義で負け知らずの古美門研介と、六法全書を暗記している正義感ある弁護士黛真知子がコンビを組んで法廷で戦う、というストーリー。古美門はかつて三木法律事務所に勤めていたが、「ある事情」で所長三木とたもとを分かち、独立。「気が乗らない」依頼は突っ返し、大手企業に高額な顧問弁護量を吹っかけて優雅に暮らしていた。そこに、殺人容疑をかけられた依頼人を救いきれない黛が現れて・・・というのが第一話。その後企業との関係も切れた上、乗りもしないクルーザーを買ったりなどの無駄遣いのため、「気が乗らない」依頼も受けることとなる。最終回の視聴率は13%超え。

出典:http://ja.wikipedia.org

色々と「凄い」の一言に尽きる番組です。『リーガルハイ』という、聞きなれない癖に何か耳に残る言葉がそもそも引っかかります。どういう意味なんでしょうか、『リーガルハイ』・・・気になります。

「リーガル」とは法律に関する、という意味の英語。

出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

やたらハイテンションな印象の「法廷もの」ということで『リーガルハイ』という意味なのでしょうか?

主人公がすごい・『リーガルハイ』を牽引する男

古美門研介

(演:堺雅人)不敗の弁護士。腕は最高だが、人としては・・・?

マシンガントーク

彼のマシンガントークは聞き取れないレベルではないものの、かなり高度です。「よく思いつくなあ」というほどに。黛先生とのやり取りも含め、『リーガルハイ』の名物でした。

手段を選ばない

「勝つためなら何でもする」ようで、法に携わる身ながらどんな手でも使い「敵」に勝つ。そのため最強の弁護士でありながら放送界きっての嫌われ者でもある。時には正論で、時には人の道にあった理論で、情に訴え、人の心を動かす。駆け引きや策略にかけてはまさに天才、いや鬼才である。

出典:http://dic.pixiv.net

視聴さをさえ感動させた後で「勝ったぜヒャッホ~ウ!」という態度を見せたりするんだから、「涙返せ」と言いたくなります。しかし、先生の行動力、見習いたいです。

顔芸

古美門先生のもう一つの魅力、顔芸。初回から最終回までずっと、『リーガルハイ』の名物であり、楽しみでもありました。堺さんが顔面神経痛になっていなかったかが心配です。

登場人物がすごい・『リーガルハイ』を彩る脇役の皆さん

黛真知子

古美門先生とやり合えるのが凄いです。

駆け出しの弁護士。元は古美門の敵である三木の法律事務所にいたが、諸事情で古美門の事務所に。六法全書を暗記しており、勤勉にして正義感あふれる弁護士。その信念は、「真実の追及」だが、少々青臭く、また古いと古美門から「朝ドラのヒロイン(略して朝ドラ)」と馬鹿にされることも。(演:新垣結衣)。

出典:http://dic.pixiv.net

古美門先生とは真逆の弁護士であり、衝突も絶えませんでした。というか毎回衝突していました。それが『リーガルハイ』を楽しむ味わいの一つ。

服部

実は古美門先生の父親と旧知とか。甘くダンディな声で、さりげなく古美門先生をなだめたり、この人がいなかったらいろんな意味でどうなっちゃうんだ古美門は・・・といった印象です。

古美門事務所の自称「事務員」だが、様々な過去、特技を有する。一例として、しょうゆの製造や、ディーラー(しかもラスベガス)、スイスのホテルでの料理長など。火事一般引き受けているらしく、毎回彼の作った多彩な料理が登場する。(演:里見浩太朗)

出典:http://www.kareiku.com

何者、という言葉が似合います。物腰柔らかなおじいさん、といった印象だけに。古美門先生も彼の言うことだけは聞きます。というより、うまく誘導されています。『リーガルハイ』の善意(?)であり、陰の主役であり、最終回では「敵に回った」黛に助言もしてくれます。

加賀蘭丸

古美門先生とは違うベクトルのすごさです。

古美門の情報屋。本業は俳優だが、売れていないとのこと。しかも子役に駄目だしされた。しかし情報屋としての手腕はかなりのもので、古美門が「勝つ」ためあらゆる場所に潜入、捜査する。過去にある事件を起こした際、古美門に救われた模様。(演:田口淳之介)

出典:http://ja.wikipedia.org

情報提供の際、おいしそうに服部さんの食事を食べて、お小遣いもらってました。最終回では、彼にも転機が・・・?

三木長一郎

古美門がかつて所属していた事務所の所長。手段を択ばない古美門を危険視していたが、「ある出来事」がもとで完全に決裂。以降は毎回ライバルキャラのごとく登場し、しのぎを削ることに。(演:生瀬勝久)

出典:http://ja.wikipedia.org

「ある出来事」の詳細は最終回で語られることになる・・・。

沢地君江

最終回でものすごいことを言ってました。

妖艶にして知性あふれる、三木の秘書。実は格闘技の達人。(演:小池栄子)

出典:http://ja.wikipedia.org

『犬神家の一族』パロディ回でのパック姿は必見です。

圭子・シュナイダー

美人だけど、夫に負けない腕と下弁舌と頭脳の持ち主。

古美門のかつての妻。裁判の象徴とも言えるアメリカで激しい戦いを生き抜いてきており、日本でぬくぬくしていた元夫にも容赦しない「女版古美門」である。古美門曰く寝相が悪くて金遣いが荒い、とのこと。「シュナイダー」というのは現在の夫。三木が「韓国での訴訟に勝った褒美」として古美門に与えたメダルを二つに割った、その片方を、古美門ともども現在も持っている。(演:鈴木京香)

出典:http://yamabuki-iro.cocolog-nifty.com

何だかんだで思い合ってたんですかね。ゲストキャラでしたが、最終回で、素っ気ない言葉で始まりつつも黛先生を励ますようなメールを送っていたのが「認めてくれている」といった感がありました。ある意味、黛先生にとっての「法曹界での母」なのかもしれませんね。

オープニングもエンディングもすごい

『リーガルハイ』のオープニング。黛真知子が、古美門研介に蹴りかかるも避けられて、六法全書を投げつける、というのを11話かけてやっていました。エンディングで『リーガルハイ!』というシャウトともに、怪獣のように悠然と街を闊歩する巨大な六法全書がたまりません。

脚本がすごい・リーガルハイの脚本家と、その内容

古沢良太

1973年誕生。漫画家志望だったが、2002年に脚本家デビュー。ドラマでは『相棒』シリーズや『動物のお医者さん』、映画では『ALWAYS 三丁目の夕日』などで知られる。

出典:https://ja.wikipedia.org

『相棒』の脚本家さんだったと知ったときは「なるほど!」と思いました。しかも『動物のお医者さん』まで執筆されていた方だったとは。道理で面白いハずです、『リーガルハイ』。

実はインターバル?

先に述べたようなマシンガントークの他、「やりすぎだろう!」というほどの誇張的演技など、何から何まで「全力疾走」という言葉を思わせる『リーガルハイ』ですが、実はインターバルであったことに気づきました。

人気子役とその母親の戦い。子役の安永メイは12歳にして飲酒、喫煙をやり、「仕事と夜遊びのせいで肺は真っ黒だし、肝臓はボロボロ」と語る。CM一本分、2000万円で依頼を受ける古美門だが、三木の用意した母親側の「味方」は九州の法曹界で有名な検事、古美門清蔵。つまり、古美門の父であった。

出典:http://blog.livedoor.jp

二組の親子の「戦い」と、古美門先生の過去が描かれた回でした。子供時代からある種「ひねくれた」ところはあったようですが、父親に対する思いもいろいろあったんでしょう。泣き出しそうなのをこらえているような姿が、衝撃的でした。そうです。『リーガルハイ』には、こうした「泣かせどころ」とまではいかないものの、シリアスさが根底にはあるのです。このエピソードは最終回以上、自己最高の視聴率をたたき出しました。ある意味これが最終回でもいいのではないかと思うほどに。しかし、それではだめなのです。ドラマのテーマ、それを描ききらなくては最終回は迎えられません。『リーガルハイ』とて、例外ではないのです。

最終回、一話前

笑いと感動を大げさでなく届けてくれた『リーガルハイ』も最終回に近づき、さびしくなってきました。しかし、「最後の戦い」は最終回一話前から始まっていたのです。

南モンブラン市絹美村なる土地に化学工場が建つことに。公害訴訟を訴えるため老人たちが依頼にやってくるが、どこか観光気分。裁判に臨み、わずかな金で納得してしまう。そんな彼らに、古美門はにこやかに、しかし威圧を少しずつこめながら言う。
「深い傷を負う覚悟を持って前に進むのが闘うということ」
「愚痴なら墓場で言え!」
「金がすべてじゃない!?金なんですよ!あなた方が意気地を見せつけてやれる方法は、奪われたものと尊厳にふさわしいだけのものを勝ち取ることだけだ!敗戦というどん底から這い上がり今の豊かな国に再建した皆さんならできるはずだ!・・・と思っていた私が愚かでした」

出典:http://meigenatsumemashita.web.fc2.com

上記すべて、最終回一話前の『リーガルハイ』で語られた言葉です。老人たちが許せなかったんでしょうね。殴られながら、大勢の老人たちから文句を言われながらも上記の言葉で彼らのやる気を引き出し、最終回へ続きます。いや、かっこよかったです。そして胸打たれました。最後まで気が抜けないドラマ、それが『リーガルハイ』。そして、幹と古美門の「因縁」である「沙織」について語られて、最終回へと向かうのでした。

『リーガルハイ』涙と感動の最終回は・・・?

1年後。古美門から独立した黛が再び事務所を訪れる。依頼人は先の化学工場の訴訟の再協力してくれた社員、八木沼佳奈。彼女は別の会社に引き抜かれたものの、不当解雇されていた。しかし、古美門はなんと相手側に!黛と古美門の全面対決が始まる!

出典:http://netabare1.com

自己紹介時の古美門先生の顔がたまりません。最終回にして始まった師弟(?)対決。ベタといえばベタですが・・・?

様々な人物のアドバイスをもとに行動する黛。そんな中、黛は沢地から「三木と古美門が対立するきっかけとなった」出来事について語る。それは、「沙織」を巡ってのこと。三木が自分の娘のようにかわいがっていた沙織。しかし、裁判に勝つため、古美門はそんな沙織をも利用した。「古美門を倒そう」と決意を新たにする黛だったが・・・。 

出典:http://netabare1.com

「沙織」は身よりがなかったとか。今まで登場した元嫁、父親、そして服部までが最終回にて再登場(圭子はメールででしたが)、黛にアドバイスをくれる演出はいいと思いました。いかにも最終回、といった感じで、けど寂しさを軽減し、わくわくさせてもくれました。

沙織のことを古美門に話し、「恩返しとして、勝たせていただきます」と宣言した黛は公判の場で訴える。法や正義について。そして、涙ながらに訴えたのは、「理想は現実だって覆せる」ということ。深刻な表情で、古美門は反対尋問をしなかった。しかし次の公判でさらに事態は逆転。何とか味方に取り込んだと思った人物が、「不当解雇はなかった」と語った。そして語りだす古美門。「我々は神ではありません。人間が人間を裁くのに必要なのは、感情などではなく、証拠と法です」八木沼はタイの会社に引き抜きが決まり、去っていった。古美門は「お前は甘い」と相変わらずの弁舌で語る。「どうせやるなら徹底的にやるんだな」と。黛は負けを認めるが、まだ残っていることがある・・・と、三木の事務所へ連れて行く。そう、「沙織」の問題決着のためだった。

出典:http://netabare1.com

古美門先生の用意周到ぶり、正論ぶり・・・見事にやられた、という感じです。そして明らかになる、「沙織」の真実・・・。

最終回で分かった、『リーガルハイ』のテーマとは

黛と古美門の象徴するもの

『リーガルハイ』を象徴するオープニング。最終回でついに逆転か!?と思わせて・・・。

オープニングがすべての答え、といったところでしょうか。古美門先生は現実を、黛先生は理想をそれぞれ表している。「神様じゃないんだから」と、一話目にして「本当に人を殺しているかもしれない人物を無罪放免にしてしまった」ようなドラマです。そして最終回で古美門先生が言うとおり、「法律や証拠」でなければ裁けない現状。古美門先生の表情、「六法全書を丸暗記していても何の役にも立たない、勝たなければね」という笑顔に思えて仕方ありません。そして、いったんは倒れながらも立ち上がる黛・・・「理想は死なない」ということでしょうか。ひょっとしたら、「現実」に一矢報いることだってできるのでは・・・そう思わせるオープニングと、「やっぱり理想を実現するには相応のことをしなければ」と思わせる最終回。そう、古美門先生は結構周到に根回しをしていたのです。「勝つためならどんなことだってする」彼の姿勢は、「どんな努力も惜しまない」という覚悟の裏返しもあるのでしょう。「沙織」のことも含めて。

走っていたのに疲れないドラマだった理由

古美門のマシンガントーク、「濃い」ともとれる多彩なキャラクター・・・何だか突っ走っている印象でも見ていて疲れなかったのは、先に述べたようにインターバルだからです。笑うところは笑って、考えるべきところは考える・・・法律ものなのに疲れず、気張らずに最終回まで見られたのはそのおかげ。緩急見事な神業的計算のおかげです。

最後に

『リーガルハイ』はかなりの人気を誇り、スペシャル版や続編も作られました。続編はパワーアップしているのはもちろん、やはり最終回まで突っ走っていました。駆け出しゆえ、そして理想を語りすぎたが杖に負けてしまった黛先生ですが、古美門先生のところで鍛えられたせいか理想だけを追う弁護士ではなくなっていたように思います。新米弁護士の、単なる成長モノではない『リーガルハイ』。そのテーマは「人間」と「現実」だと思います。最終回のすべての事象、事物がそれを物語っていたように思いました。

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