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ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の映画「奇跡の丘」あらすじと解説

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の映画「奇跡の丘」。無神論者でコミュニストのピエル・パオロ・パゾリーニ監督が「マタイによる福音書」を基に制作した映画です。映画「奇跡の丘」はどのような映画なのか?映画「奇跡の丘」についてまとめました。

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督

1922年3月5日イタリア生まれ。映画監督、脚本家、詩人、小説家。軍人の父と元教師の母の間に生まれます。本人曰く気性の激しい父とはウマが合わず、芸術家気質で感性豊かな母親に影響を受けて育ちました。
22歳のころ詩集を発表し、その後教職に就いています。執筆活動も並行して続けていました。1955年には処女小説を発表しています。
文学の才能を評価された彼は脚本家としても活動を開始し、1961年「アッカトーネ」で映画監督デビューします。
1975年11月2日、映画「ソドムの市」撮影後、凄惨な遺体となって発見されます。

主な監督作品

ソドムの市

1975年制作。パゾリーニ監督の遺作となった作品です。マルキ・ド・サドの『ソドム百二十日あるいは淫蕩学校』が原作です。
拷問やスカトロなど残虐な描写があります。
あらすじは、ファシストである権力者が美少年や美少女を集め変態行為を行うというものです。

デカメロン

1971年制作。ヨーロッパの古典文学・ボッカチオの「デカメロン」を映画化したものです。

アラビアンナイト

1974年制作。「デカメロン」「カンタベリー物語」に続くパゾリーニの艶笑三部作の一本。ヌレディンは女奴隷のズルムードを買い、二人で幸福に暮らしていましたが…。

映画「奇跡の丘」登場人物

イエス…「奇跡の丘」の主人公。神の子であり、民の救世主です。
母マリア…イエスの母。聖霊によってイエスを身ごもります。
ヨセフ…マリアの夫。大工で、ベツレヘムに住んでいます。
洗礼者ヨハネ…人々に教えを説き、イエスの出現を予言しました。
ペトロ…漁師。イエスの弟子。
アンデレ…漁師であり、ペトロの兄弟。
ヤコブ…イエスの弟子。
ヨハネ…イエスの弟子。
フィリポ…イエスの弟子。
トマス…イエスの弟子。
シモン…イエスの弟子。
バルトロマイ…イエスの弟子。
タダイ…イエスの弟子。
小ヤコブ…イエスの弟子。
マタイ…イエスの弟子。
イスカリオテのユダ…イエスの弟子。イエスを裏切ります。
ヘロデ大王…イエスを恐れ殺そうとした。
ヘロデ王…ヘロデ大王の息子。
ヘロデア…ヘロデ王の后。元々ヘロデ・アンティパスの兄弟の妻でした。
サロメ…ヘロデアが最初の結婚によってもうけた娘。母にそそのかされヨハネの首を求めます。
ピラト総督…、ローマ帝国の第5代ユダヤ属州総督。
バラバ…囚人。処刑が決まっていましたが祭日のため恩赦されました。

「奇跡の丘」のキャストは全員素人だった!

何とパゾリーニ監督は、出演者は全員素人を起用しました。主人公のイエスはイタリアに留学中だったスペインの学生が演じています。老いた聖母マリアはパゾリーニの母親が演じました。

映画「奇跡の丘」あらすじ※ネタバレありです

映画「奇跡の丘」あらすじ①

ある日主の使いがマリアの婚約者・ベツレヘムに住む大工のヨセフの元へ現れ、彼に言いました。
「マリアは聖霊によって懐妊した。彼女を妻に迎えなさい。その子は民を罪から救う救済者となる。その子をイエスと名付けなさい。」
ヨセフはその通りにマリアと妻としました。
そしてマリアは男の子を産み、その子をお告げの通りイエスと名付けました。

ヘロデ大王はイエスの生誕を恐れ、ベツレヘムとその近辺にいる2歳以下の男の子を皆殺しにするよう告げます。
主の使いがヨセフの元に現れ、イエスを守るためにエジプトに逃げるように伝えます。
ヨセフとマリアは言われた通りエジプトへ行きます。
ヘロデ大王が死ぬと、主の使いがヨセフの元に現れイスラエルに戻るよう言います。

映画「奇跡の丘」あらすじ②

洗礼者・ヨハネが人々に洗礼しています。
彼は人々に教えを説き、自分よりも力のある者の出現を予言します。

成人したイエスは、洗礼を受けるためにヨハネの元を訪れました。
洗礼後、天から声が響き渡ります。
「これこそ我が子。我が心にかなう子である。」
主である神の言葉でした。

イエスは荒野で何度も悪魔に試されそそのかされますが、すべて退けます。
イエスはこの頃から人々に教えを説いてまわりました。
イエスは漁師のペテロとアンデレを弟子にします。続いてヤコブとヨハネを弟子にします。
イエスは使徒と共にガリラヤ全土を旅し、教えを説き、様々な病気に苦しむ人を治すなど数々の奇跡を起こしました。

映画「奇跡の丘」あらすじ③

見事な踊りを披露したヘロデアの娘・サロメは、感激したヘロデ王に欲しいものを聞かれ、「洗礼者ヨハネの首が欲しい」と答えます。そのためヨハネは処刑されてしまいます。

一方、イエスは弟子たちに、自身がエルサレムで長老や司祭たち、律法学者たちから苦しみを受け、殺されるけれども3日後に復活することを告げます。それを聞いた弟子たちは戸惑います。
しかしイエスはエルサレムに向かいます。
イエスはそこでパリサイ人と律法者の行いを批判します。
イエスが民衆を扇動していると危機を感じた長老や司祭たちは、彼を処刑しようとします。

映画「奇跡の丘」あらすじ④

イエスと弟子たちの元に一人の女がやってきて、イエスの頭に香油を注ぎます。
それを見たユダは、「香油は高級品だ。高く売れば貧者に施せる」と咎めますが、イエスは「女は良いことをしている。」と諭します。

ユダは、パリサイ人の元へ駆けつけ、イエスを明け渡したらお金をいくらもらえるか訪ねます。返ってきた返答は銀貨30枚でした。

イエスは12人の使徒たちと共に晩餐についています。そこでイエスは「この中の誰か一人が私を裏切る」と言いました。
「それはわたしですか」と、戸惑う弟子たちですが、イエスは名指ししません。
イエスは預言通りにユダに裏切られ、長老や司祭たちに捕らえられてしまいます。

映画「奇跡の丘」あらすじ⑤

長老たちはイエスを処刑するため、ピラト総督に彼を引き渡します。
一方、罪なき人を売ってしまったことを後悔したユダは自殺を試みます。

イエスの処刑に躊躇したピラトは、イエスの処刑の是非を民衆に問います。
バラバを恩赦し、イエスを処刑せよと叫ぶ民衆の声を聞いたピラトは、自分に責任はないとし処刑を決めます。

イエスはゴルゴタの丘で十字架に磔にされ、処刑されました。母マリアと弟子たちは悲嘆にくれますが、主の使いが「ガリラヤに行けば彼に会える。」と告げます。
ガリラヤには、イエスがいました。
預言通りに、彼は蘇ったのでした。

映画「奇跡の丘」解説

映画「奇跡の丘」は新約聖書「マタイによる福音書」に忠実に作られた内容です。
キリストの生涯を描いた映画は数多くありますが、その中でも最高傑作とされています。
「奇跡の丘」は映像の美しさもさることながら、音楽が効果的な役割を果たしています。

新約聖書とは?

新約聖書とは、キリスト教の経典です。全27巻あります。キリストの事跡が記された福音書、弟子たちの行動が記された使徒行伝、使徒たちの書簡及び黙示録があります。
旧約聖書はユダヤ教の聖典ですが、キリスト教徒によっても受け継がれたため、新約聖書と区別してそのように呼ばれています。

映画「奇跡の丘」まとめ

以上、「奇跡の丘」について取り上げました。
「奇跡の丘」は新約聖書・マタイによる福音書を忠実に再現したものでした。
新約聖書は物語として観ても大変興味深い内容です。
「奇跡の丘」を観たあと、新約聖書を読むとより理解が深まるのではないでしょうか。
パゾリーニ監督の傑作と名高い「奇跡の丘」、是非ご覧になってください。

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