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2023/12/28
大今里
セッション(原題:Whiplash)
監督:デミアン・チャゼル
脚本:デミアン・チャゼル
製作:ジェイソン・ブラム
ヘレン・エスタブルック
ミシェル・リトヴァク
デヴィッド・ランカスター
製作総指揮:ジェイソン・ライトマン
コウパー・サミュエルソン
ゲイリー・マイケル・ウォルターズ
出演者:マイルズ・テラー
J・K・シモンズ
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
撮影:シャロン・メール
編集:トム・クロス
名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。
2015年に日本公開されるとネット上には、映画「セッション」の感想が瞬く間に書き込まれました。その感想はどれもおよそ音楽映画には見られないような過激な内容も多く、かなりの注目作として話題を呼びました。
ただ総じてその評価や感想はどれも高評価が多く、その評価を裏付けるように映画「セッション」は、第87回アカデミー賞で5部門にノミネートされ助演男優賞を含む3部門で受賞しました。
映画「セッション」を監督したのは、若き映画監督デミアン・チャゼル。彼は「セッション」の後、「ラ・ラ・ランド」にてその評価を不動のものとします。
実は彼は「セッション」の主人公ニーマン同様にジャズドラムに打ち込んだ経験があり、その時の実体験が「セッション」の元となったとインタビューで語っています。
だからこそ、あれだけのリアリティーのある人間ドラマを描くことができたんですね。
映画「セッション」には「天使にラブソングを」のような音楽映画にありがちな、予定調和な爽やかさは微塵もありません。そういったものを期待して見に行った方の中には、以外にも重厚な内容に驚かれたようです。また逆に、厳しい音楽学校時代を過ごされた方からは「共感できる」との声も聞かれます。
主人公ニーマン役のマイルズ・テラーは実際に2ヶ月間ジャズドラムを練習し、徹底的に主人公のニーマンに似せていきました。また、前の項でも書いたとおり、監督のデミアン・チャゼルは過去にミュージシャンになろうと志した経験があり、そのときに経験した人間関係や葛藤がこの映画の重厚なドラマを生んでいるひとつの要素なのかもしれません。特に注目してほしいのは、主人公ニーマンと、それを指導する講師フレッチャーとのやり取りです。細かいセリフにもそれぞれの人格がにじみ出ていてまるでドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティーがあります。
あらゆる感想の中でも一番散見されたのが、「セッションは音楽映画ではない。壮絶な殴り合いのアクション映画だ!」という意見です。
たしかに「セッション」の中では、ニーマンとフレッチャーの息詰まる駆け引きが何度も何度も繰り広げられます。まるで、ボクシングの試合を見ているような緊張感とスリル。
見ているこっちもハラハラ・ドキドキさせられます。
タイトルの「セッション」とはジャズなどで演奏者が楽器を持ち寄り合奏することですが、本作ではまさに音を使った殴り合いを見せられているような錯覚に陥ります。
その緊張感が、他の音楽映画と一線を画している部分だと個人的には思います。
正直筆者自身、ここまで空気の張り詰めた音楽映画はあまり見たことがありません。
「まるでアクション映画」との感想のとおり、「セッション」では実際に流血するシーンが多々登場します。
実際に殴り合いのシーンがあるわけではないのですが、練習をしすぎて身も心もボロボロになっていく主人公がマメを潰して手から流血してしまう場面があります。また、作中の終盤で大怪我を追ってしまう場面もあり、血に弱い方々の中にはこういった痛々しい描写が苦手だと感じる人も少なくないようです。
特に、主人公の手から流血する場面は実際に主演のマイルズ・テラーが撮影中マメを潰してしまい、作り物ではなく本物の血が流れているというのですから、なおさらです。
リアリティーという意味ではとても説得力のあるシーンなのですが、血に弱い方は少々鑑賞に勇気がいるかもしれませんね。
ネット上での感想を見ていくと、もちろん通常の音楽映画として期待した人たちの中からは批判の声も聞こえてきます。しかしこの映画にはそれを吹き飛ばしてお釣りが来るほどの衝撃が、ラスト9分19秒に控えています。
それまでの主人公の苦痛や苦悩が、ここへたどり着くまでの伏線だったのではないかと思えるほどです。あまり語ってしまうとネタバレになりますので、その衝撃や感動を見られたい方は是非ご自身の目と耳で体感してください。
筆者個人の感想としては、この瞬間のためにこの映画を見ていたのかと思えるぐらいのクライマックスでした。映画の宣伝でも言われていた「ラスト9分19秒の展開が非常に素晴らしい!」というのは嘘でもなんでもありません。
さて今回は、映画「セッション」の数々の魅力を、感想や評価といった部分からご紹介させていただきました。特に賛否のわかれる感想が多く、また音楽映画にはない感想も散見される作品のためか、ちょっと意外な角度からの魅力紹介が多かったかと思います。
ただ本作をすでに鑑賞済みの方には、どれも「わかる!わかる!」と思わずつぶやいてしまうような感想や意見ばかりだったのではないかと思います。筆者も他の方の感想や評価を読んで、たくさん共感できる部分がありました。また批判的な感想であっても、今まで考えもしなかった解釈にとても納得することもありました。
もしまだ見られていない方は是非チェックして、映画「セッション」の世界にどっぷりと浸ってみてくださいね。
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