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認知症を扱った映画 超高齢化社会に向けて、何ができるのか

認知症は超高齢化社会へと変化してきている日本の大きな問題になってきています。一口に認知症と言っても、様々な原因と症状があり、原因の解明や対策もまだ充分進んでいないのが現状です。認知症をテーマに映画も数多く作られていますので、ぜひご紹介する映画を見てみては。

認知症の分類

日本における認知症の85パーセントは、以下の四大認知症が占めています。

アルツハイマー型認知症

認知症の約半数を占める、最も多いタイプ。他の病型と比べてゆっくりと、しかし確実に進行する病型です。
健康体の女性に多いとも言われます。

発症後の進行スピードは個人差がありますが、発病から8~10年の時間をかけて高度に移行するのが一般的と言われています。ただし、64歳以下で発症する若年性アルツハイマーの場合は、上記よりもかなり進行速度が速まります。

出典:http://ninchisho-online.com

アルツハイマー型認知症の初期症状として、
・「あれ」や「それ」を多用するなど、人の名前や物の名前が思い出せない
・会う約束の日時を間違える、あるいは約束自体を忘れる
・最近のできごとが思い出せない
といった症状が現れたら要注意。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多いと言われ、認知症全体の2割ほどを占めます。

レビー小体型認知症の特徴は、
・実在しない虫や小人が見えると訴えるなどの、幻視
・体の傾き、腕が前で固まる
・表情が暗く、目の焦点が合わず、意識が遠のいて、うとうとする
・買ってきた市販薬が効き過ぎて寝込むなど、薬に過敏
・夜中に大きな声で寝言を言う、叫ぶ
・食事している時にむせる
・生真面目すぎる
など。

レビー小体型認知症は、最初からすべての特徴的な症状が出る訳ではなく、パーキンソン病やうつ病と診断されることもある、とても診断が難しい病型です。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、レビー小体型認知症と並んでアルツハイマー型認知症に次いで多いと言われる代表的な病型です。動脈硬化が進んだ男性に多いとされます。

脳血管性認知症になりやすい人の特徴は、
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの持病がある、あるいはかかったことがある、
また、煙草を吸う・運動不足・ストレスに弱いなどでもリスクが高まります。

脳血管性認知症は突然発症し、状態のダウンがはっきりとわかる段階的な進行が特徴的です。また、良くなったり悪くなったりを繰り返し、状態が一定しない傾向もあります。

出典:http://ninchisho-online.com

脳血管性認知症の特徴は、
・日や時間帯で症状が変わる、まだら認知症
・うまく動作ができない(ものを飲み込めない、手足がしびれる、ろれつが回らない、尿失禁など)
・気分が激しく落ち込む
・昼夜逆転する
・感情が制御できない
など。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は一つの病型を指すものではなく、ピック病など、複数の病気の総称です。40~60代という、比較的若い年齢から発症しやすい病気です。初期には物忘れの症状があまり見られないことから、認知症と気付かないことも多い病態です。

性格や行動の変化に注意

前頭側頭型認知症では、こんな症状が出ます
・穏やかだったのに、怒りっぽくなった
・気配りができなくなる
・万引きや痴漢などをして、悪気がなく繰り返す
・家事や仕事をしなくなり、入浴なども嫌がる
・同じ行動を執拗に繰り返す
・甘いものを食べ続ける
・口いっぱいに食べ物を詰め込む
・食べ物でないものを口にする

実際にはこれらが合併した混合型認知症も多く、専門家でも診断が難しいと言われます。

若年性アルツハイマー型認知症を扱った映画

アルツハイマー型認知症の中でも、特に若年性アルツハイマー型認知症を扱った映画は多いです。
今回は別項目としてご紹介します。

『明日の記憶』

働き盛りのサラリーマンが若年性アルツハイマー型認知症を発症し、次第になくなっていく記憶におびえながら、妻の愛を支えに病気と戦っていく。
美しい映像と音楽に、涙を禁じ得ない、珠玉の映画。

監督:堤幸彦
出演:渡辺謙、樋口可南子、吹石一恵、坂口憲二、田辺誠一 ほか

宮本文明のオーボエが奏でる映画テーマ曲も静かな感動を誘います。第30回日本アカデミー賞で優秀作品賞を受賞したほか、主演の渡辺健が最優秀主演男優賞を、樋口可南子が優秀助演賞を、大島ミチルが優秀音楽賞を受賞しました。

『私の頭の中の消しゴム』

日本のテレビドラマを原作とした、韓国の切ない純愛映画。
甘い結婚生活に浸る新婚夫婦だったが、やがて妻の様子がおかしくなり、若年性アルツハイマー型認知症と診断されて……。

監督:イ・ジェハン
出演:チョン・ウソン
    ソン・イェジン
    ペク・チョンハク
    パク・サンギュ
    クォン・ビョンギル
    キム・ヒリョン

『アウェイ・フロム・ハー君を想う』

たくさんの映画賞を受賞した、カナダの映画作品。
幸せな結婚生活を送ってきた夫婦の妻が若年性アルツハイマー型認知症を発症し、自ら施設に入ることを決意するが……。

監督:サラ・ポーリー
出演:ジュリー・クリスティ
    ゴードン・ピンセント
    オリンピア・デュカキス
    マイケル・マーフィー

『アリスのままで』

主演のジュリアン・ムーアがアカデミー主演女優賞に輝いたのを始め、数々の映画賞を受賞した、アメリカの映画。

監督: リチャード・グラツァー、ワッシュ・ウェストモアランド
出演: ジュリアン・ムーア
    アレック・ボールドウィン
    クリステン・スチュワート
    ケイト・ボスワース
    ハンター・パリッシュ
    シェーン・マクレー

大学教授として、妻として、3人の子供の母として充実した日々を送るアリス。しかし、簡単な単語が出てこなくなったり、道に迷ったりしはじめるようになり、若年性アルツハイマー型認知症と判明する。ついには大学も辞めなくてはならず……。

アルツハイマー型認知症を扱った映画

『恍惚の人』

アルツハイマー型認知症という認識がまだなかった、1973年に製作された、モノクロ映画。認知症映画の先駆けです。
主演の森繁久彌は役に入り込みすぎて、簡単なことでも指示されないとできない状態でこの映画の撮影が進んだそうです。

監督:豊田四郎
出演:森繁久彌
    田村高廣
    高峰秀子

『アイリス』

イギリスの女性作家アイリス・マードックの実話を描いた映画。アルツハイマー型認知症を患った妻を温かく介護する夫。しかし一人での看護も限界になって……。

監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ
    ジム・ブロードベント
    ケイト・ウィンスレット
    ヒュー・ボネヴィル

『きみに読む物語』

ニコラス・スパークスの小説などをもとに映画化したアメリカ映画。
アルツハイマー型認知症の老女とともに療養施設に入っているデュークは、彼女にノートに書きつけられた物語を読み聞かせている。二人の間には過去に激しい恋があって……。

監督:ニック・カサヴェテス
出演:ライアン・ゴズリング
    レイチェル・マクアダムス
    ジーナ・ローランズ
    ジェームズ・ガーナー
    ジョーン・アレン
    ジェームズ・マースデン
    サム・シェパード

『毎日がアルツハイマー』1・2

びっくりするほど明るい映画。ナレーションやテロップでツッコミが入るなど、まるでバラエティ番組のよう。アルツハイマー型認知症の映画としては非常に珍しい、元気をもらえる映画です。

病気という暗さが感じられない、楽しい映画予告編。こんな風に楽しい毎日を送れるのも、家族の深い理解と支えあってこそなのでしょうね。

『しわ』

ゴヤ賞の最優秀アニメーション賞と最優秀脚本賞の受賞映画。特別養護老人ホームでの人間模様や、認知症を受け入れる本人の心情などが描かれている上質な長編アニメ映画です。

監督:イグナシオ・フェレーラス

レビー小体型認知症を扱った映画

『妻の病 −レビー小体型認知症−』

2014年に公開された、ドキュメンタリー映画です。レビー小体型認知症にかかった妻と、それを支える家族やケアスタッフを姿を追った、10年間の物語です。1時間27分。企画・製作:いせフィルム

あなたは愛する家族が認知症になったら、自分が認知症になったら、そんな想像をしてみたことがありますか?

その他認知症関連の映画

『「わたし」の人生 我が命のタンゴ』

精神科医である和田秀樹医師がメガホンを握った、実話をもとにした映画。

監督:和田秀樹
出演:秋吉久美子、橋爪功、冴木杏奈、小倉久寛、木下あゆ美

子供も成長して手を離れ、自分の時間を持てるようになった百合子。ずっと夢見ていた大学教授を目指して歩み始めた矢先、父親が認知症だと分かり……。

認知症を扱った映画はいろいろあるのですね。暗いテーマですが、中には明るいタッチで描いたものもあるので、身構えずにぜひ観てみてくださいね。

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