ドラえもん「のび太と夢幻三剣士」を改めて見てみると・・面白い!!
2016/08/03
まぁぴょん
『ドラえもん のび太と夢幻三剣士(むげんさんけんし)』とは、1994年に公開されたドラえもん映画化15周年記念作品です。
原作となった漫画は藤子・F・不二雄が執筆し、月刊コロコロコミックで掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の第14作にあたります。
ファンの間では、ドラえもん映画としてはかなりの異色作として知られています。
映画『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』は、第12回ゴールデングロス賞で「優秀銀賞」を受賞した作品でもあります。
また、ドラミちゃん主演映画の最終作となった『ドラミちゃん 青いストローハット』
ウメ星から地球にやってきたデンカと王様夫妻の日常を面白おかしく描いた『ウメ星デンカ 宇宙の果てからパンパロパン!』の2作品も同時上映されました。
映画監督を務めたのは芝山努さんです。
芝山さんといえばテレビアニメ『ちびまる子ちゃん』や『忍たま乱太郎』をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた名監督のひとりです。
ドラえもんの映画作品も第4作から第25作までの計22作品を手掛けています。
『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』は配給収入13億3000万円、観客動員数270万人という大ヒット作品となりました。
さすが、ゴールデングロス賞優秀銀賞は伊達じゃありませんね。
実は『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』から、のび太たちの暮らす家にも変化がありました。
ドラえもんシリーズに限らず、長く続いている作品では家や街並み、家電や持ち物などが少しずつ変化していくことはよくある話です。
野比家も例外ではなく映画化15周年という節目に、家の外観や間取りがリフォームされているのです。
ドラえもん映画の公開に先立ち放送される、おなじみの予告編。
中でも『のび太と夢幻三剣士』はシリーズ15周年記念作品ということもあり、かなり凝った内容となっていました。
予告編は「黄金ハット」となったのび太が大活躍するシーンから始まります。
ライオン役であるドラえもんと共に敵のただ中に飛び込むと、バッサバッサと次々に切り伏せていきます。まさに獅子奮迅の大活躍です。
そして『超大作 のび太の黄金ハット』と勇ましくロゴを掲げるのところまでは良いのですが…。
実はこれ、壮大なウソ予告だったのです。
結局「これから始まるの!」とドラえもんにロゴを取り上げられてしまい、本当の予告編『夢幻三剣士』が始まります。
当時、だまされた!と思った子供たちも多いのではないでしょうか。
15周年記念ということで、製作陣も気合が入っていたんでしょうね。
ドラえもん映画の中でも「異色作」「怖い」「不気味」などの呼び声が高いと同時に、ファンの間では今なお高い人気を誇る『のび太と夢幻三剣士』。
そのあらすじを以下にご紹介していきます。
魔王に攫われてしまったしずかちゃんを助けるべく、「黄金ハット」となって大活躍する夢を見ていたのび太くん。
しかし、いよいよクライマックス!という良いところでママに起こされてしまいます。
目を覚まし、夢と現実の落差にがっかりするのも束の間。
「せめて夢の中では良い格好をしたい!」とドラえもんにお願いするのでした。
予告編の黄金ハットがまさかこんなところで登場するとは驚きです。
あれはのび太の夢でもあったんですね。
しかしドラえもんからは「もっと現実の世界で頑張らないと!」と突き放されてしまいます。
のび太は家を飛び出し、そのまま裏山で夜遅くまで気を失ってしまうのでした。
心配したドラえもんは結局彼に「気ままに夢見る機」を与えてしまいます。
ひみつ道具「気ままに夢見る機」は、枕のような形をしており、専用のカセットを入れることで好きな夢を見られる、というものでした。
しかも現実世界でダメな人ほど活躍できるというのです。
しかし文字通り夢にうつつを抜かした彼は、今度は宿題をやり忘れてしまいます。
翌日、裏山でしぶしぶ宿題をするのび太は、奇妙な老人から「知恵の木の実」をもらいます。
もらった木の実を食べたとたん、嘘のようにすらすらと宿題が片付いてしまいました。
感激するのび太に、老人は気になる言葉を残して去ってゆきます。
きみはもっと素晴らしい力を授かる。ただし「夢幻三剣士」の世界でだが…と。
老人の言葉にすっかり乗せられてしまったのび太は、老人の言っていた「夢幻三剣士」について調べます。
それは気ままに夢見る機のカセットのひとつだったのです。
のび太はさっそくドラえもんに『夢幻三剣士』のカセットを買ってもらい、夢の世界へと旅立ちます。
そこで彼は選ばれし白銀の剣士となり、妖霊大帝オドロームからユミルメ国を守るべく、仲間と共に冒険の旅に出発します。
『夢幻三剣士』のカセットは、現実の世界に影響を与えるほどのパワーを持つという、少し特殊なカセットでした。
夢を見る本人や登場人物たちの行動が影響し合い、第二の現実世界を作り上げていきます。
悪の親玉オドロームも、本来はカセットの登場人物のひとりでしかありません。
しかし彼は自らが倒されるストーリーを覆し、このカセットを利用して夢見る機を使う人々の全夢世界を支配しようと企みます。
のび太は「たとえ夢世界で勇者になっても倒せそうなほど弱い人間」として目を付けられ、『夢幻三剣士』の世界に誘い込まれたのです。
現実世界と夢の世界を守るため、のび太たちは悪の軍団に立ち向かうのでした。
夢の世界での戦いと冒険を描いた本作品は、お馴染みのメンバーに加えて個性的なキャラクターが数多く登場します。
特にオドロームをはじめとする悪の軍団の面々は、ドラえもん映画シリーズの中でも屈指の「悪役感」を放っており印象的です。
言わずと知れた主人公。
本作ではのび太たちの夢世界の冒険に加わるため魔法使い「ドラモン」となって登場します。
数々のひみつ道具を使って大活躍をしますが、物語終盤で四次元ポケットを敵に奪われてしまい...。
現実世界ではいつも通りダメダメなのび太君。
しかし夢の世界で「白銀の剣士ノビタニヤン」となって最前線で活躍をみせます。
本作では伝説の剣のおかげで、剣の達人でという珍しいのび太君を見ることができます。
数々の困難を知恵と友情とやさしさで乗り越え、ユミルメ国を救うべく戦います。
お馴染みのヒロインしずかちゃん。
夢世界では男装し、旅の剣士シズカールとなって登場します。
しかし実は、それは世を忍ぶ仮の姿で...。
のび太と共にオドロームとの最終決戦に挑みます。
破滅的な歌唱力を持つガキ大将。
夢世界では剛腕の剣士ジャイトスとして登場し、白銀の剣を手に入れるためのび太やスネ夫と競い合います。
「夢幻三剣士」の一人としてのび太たちと共に冒険を繰り広げます。
強きに弱く、弱きに強いお金持ちのお坊ちゃん。
夢世界では子爵という立場であり、身のこなしの軽やかな剣士スネミスとして登場します。
ジャイアンと同じく白銀の剣を求めて競い合いますが、のび太に敗れた後「夢幻三剣士」の一員となります。
「夢幻三剣士」の夢世界を治めるユミルメ王国の国王様。
のび太の通う小学校の担任によく似ていますが、現実と違って少々頼りなさげな性格です。
しかし大臣たちには「廊下に立っとれ!」と怒鳴り散らす一面も。
ユミルメ国王の娘にしてユミルメ国の王女様。
名前も顔も知らない白銀の剣士との結婚が嫌で、ひとりお城を抜け出してしまいます。
姿や声がしずかちゃんによく似た妖精。
夢世界と現実世界を行き来でき、のび太たちの案内役を務めます。
思いのほかお茶目で無責任な言動が多く、観ている人の笑いを誘います。
夢世界の支配を目論む『夢幻三剣士』のラスボス。
手にしたドクロの杖から放たれる魔法で、のび太くんとしずかちゃんを一度は塵にしてしまった本作屈指のトラウマメーカーでもあります。
敵味方に容赦ないその悪役っぷりはドラえもんシリーズ随一です。
鳥の様な姿をしたオドロームのペット。
人間の言葉を話し、頭も切れることから軍団の参謀役を務めます。
ドラえもんのひみつ道具に脅威を感じ、四次元ポケットを奪い去ることに成功します。
6本の腕を持つクモの剣士。
6本の毒剣を自在に操る、本作の中ボス的存在の一人です。
ユミルメ王国侵略の切り込み隊長として都市の制圧を図るも、のび太達に敗れて辛くも逃げ帰ります。
しかしそこで悲惨な最期を迎えることに...。
巨大な体躯を誇る像の剣士。
見た目とは裏腹にその大きな耳で自由に空を飛ぶことができる、本作の中ボスの一人です。
軍を率いて城を落とそうと画策しますが、ドラえもんのひみつ道具に圧倒され、最後はのび太との一騎打ちを演じます。
『のび太と夢幻三剣士』は、数あるドラえもん映画の中でも「怖い」という感想を持つ人が多いようです。
その原因はいったいどこにあるのか、調べてみました。
劇中、オドロームとの戦いの中で、のび太としずかちゃんが死亡してしまいます。
中でもヒロインであるしずかちゃんが塵にされてしまうシーンは、今なおトラウマとなっている人もいるとか...
主要キャラクターの死と悪役の残忍性という、同シリーズ内でも他に例を見ない異色性の高さが怖さの一要因となっているようです。
のび太を『夢幻三剣士』の世界に誘った張本人である謎の老人ですが、その正体はオドロームの手下「トリホー」であることが判明します。
しかし、トリホーがのび太の前に現れたのは、のび太がまだ夢幻三剣士を知る前でした。
起動される前のカセットの中からどうやって現実世界に干渉できたのか、彼の存在の不気味さも本作品の怖さの一つになっています。
『夢幻三剣士』のラストシーンでは、のび太たちの通う小学校が「裏山の山頂」というあり得ない位置に存在しています。
これはやはり夢見る機が現実世界に影響を及ぼしてしまった結果、ということなのでしょうか。
しかし「日常性は壊さない」ことがドラえもんシリーズの約束事だったはずです。
この不気味なシーンがいったい何を意味するのか、怖いと言われるとともにファンの間でもしばしば考察の対象となっています。
藤子・F・不二雄氏は、長編作品の構想を練ることが苦手であると自身でも認めています。
『夢幻三剣士』の原作漫画を執筆していた際も、描き進めるうちにキャラクターたちが暴走し、意図しないストーリーとなったことを語っています。
後に制作された映画版では、作中の細かいところやエンディングに至っても手が加えられており、原作との差異が多くみられる作品となっています。
そもそも当初、藤子・F・不二雄氏が思い描いていた展開は、気ままに夢見る機が暴走し、夢の世界の怪異が現実世界になだれ込んでしまうといういうものでした。
夢と現実の世界の境界線が曖昧になってしまう恐怖、いわばドラえもんの「パラレル西遊記」の様なテイストの物語を目指していたとのことです。
ドラえもんシリーズには数多くの未来のひみつ道具が登場し、またタイムマシーンによって様々な時代の人々や出来事と巡り合う場面が多くあります。
しかしどの話でも共通しているのは、非日常的な時を過ごしても、あくまでのび太たちの暮らす世界の日常性は保たれているということです。
現実世界が夢の世界の影響を受けたかのようなラストシーンの描写からも、夢は夢として完結できなかった結末が「失敗作」と言わしめているのかもしれません。
『夢幻三剣士』がドラえもんシリーズの中でも特に異色であると言われる理由が、「ジャイアンとスネ夫が途中でいなくなってしまう」という点です。
いつもなら最後は全員で戦うことがお約束の展開ですが、本作では悪の親玉オドロームとの最終決戦には、のび太としずかちゃんの二人だけで臨むことになるのです。
映画ドラえもんシリーズには、毎回様々なゲストキャラクターが登場することでお馴染みです。
しかし夢幻三剣士は唯一例外的にゲストキャラクターが存在しない作品になっています。
これは公式に「ドラえもん以外」のすべてのキャラクターがゲスト扱いになっているためです。
あくまで主人公はドラえもん自身ということなのでしょう。
『のび太と夢幻三剣士』のエンディングテーマと作中歌は、武田鉄矢氏によるものです。
武田鉄矢氏は本作品を含め、ドラえもんシリーズ4作品のテーマソングを自ら歌われていますが、原作者の藤子・F・不二雄氏亡き今、この『夢幻三剣士』がその最後の作品となっています。
エンディングテーマの「世界はグー・チョキ・パー」は明るい曲調が印象的です。
世界には国も町も人もいろいろ、時間も違えば言葉も違うけど、色々あるから楽しいんだ、という内容の歌詞になっています。
メッセージ性の深い歌詞ですが、その一方でエンディングの謎のひとコマと相まって「曲調がやけに明るくて逆に不気味」という感想を持つ人もいるようです。
同じく武田鉄矢氏による挿入歌「夢の人」は、その勇ましさから作中でもたびたび使用されています。
作風やストーリーにマッチした曲調や歌詞から、ファンの間でも根強い人気を誇っています。
崖の上にそびえ立つ学校...
今でいうならハリーポッターシリーズのホグワーツを彷彿とさせますが、ドラえもんの世界ではことさら奇怪で不気味な印象を受けます。
映画ラストシーンのこのひとコマは、実は原作には存在していません。
原作者の藤子・F・不二雄氏はいったいどんな意図があり、わざわざこのシーンを追加したのでしょうか。
ドラえもんの存在自体や数々のひみつ道具をはじめ、様々な非日常に出会い、体験しながらものび太たちの日常性は保たれるのがドラえもんシリーズのルールです。
本来、夢幻三剣士で作者が表現したかったのは、「夢と現実の境界が曖昧になる恐怖」でした。
現実世界の学校と、夢の世界が融合したかのようなこの一枚絵には、作者の描きたかったものの一端が表されているようにも思えます。
夢幻三剣士のラストについては、ファンの間でも様々な意見・考察があります。
しかしシリーズのコンセプトからして、ついに現実世界が様変わりしてしまったという悲劇的なものでは決してないように思えます。
このひとコマには、原作を変えてまで作者が視聴者に伝えたかったことが表現されているのでしょう。
『のび太と夢幻三剣士』を観て「怖い」という印象を受ける人は意外と多いようです。
その原因はここまで紹介してきた作品の異色性や、様々な謎を残して物語が終わっていることでしょう。
しかしそれと同時に、大人になってから本作を観なおし、とても面白いという感想を抱く人も少なくないようです。
当時、子供の目には王道の冒険譚として映ったストーリーも、大人の目線ではまた違ったものが見えてくるのではないでしょうか。
一度観た方もそうでない方も、機会があれば本作に触れてみてはいかがでしょうか。
藤子・F・不二雄氏の残したメッセージと、本作の「怖さ」を、ぜひご自分の目で確かめてみてください。
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