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    本当は恐ろしかった!?『ヘンゼルとグレーテル』の原作あらすじ

    児童書などでお馴染みの『ヘンゼルとグレーテル』。森をさまようヘンゼルとグレーテルがお菓子の家を見つけるというあらすじで知られる、メルヘンチックなお話ですよね。実は、原作のグリム童話はもっと怖いお話だったんです。この記事では、あらすじの違いについてご紹介します。

    最近の絵本などの『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじ

    定番の児童書『ヘンゼルとグレーテル』。皆さんも子どもの頃に一度は読んだことはあるのではないでしょうか?ここで一度、あらすじを振り返ってみましょう。

    『ヘンゼルとグレーテル』あらすじ

    意地悪な継母に捨てられてしまったヘンゼルとグレーテルは森の中でおいしそうなお菓子の家を見つけます。お腹を空かせた二人は家を食べはじめますが、そこは恐ろしい魔女の家だったのです。

    ヘンゼルとグレーテルは捕まってしまい、魔女はヘンゼルを太らせてから食べようとしました。いよいよヘンゼルが食べられようとする時、カマドの火加減の調整を命令されたグレーテルが魔女をおびき出し、魔女をカマドに閉じ込めて倒しました。

    ヘンゼルとグレーテルは魔女の家にあった宝物を家に持ち帰ります。すると、継母はすでに死んでおり、残されていた優しいお父さんと一緒に暮らしました。

    以上が大体のあらすじです。あらすじを読むと、お菓子の家というメルヘンなお話ではなく、兄妹のサバイバルを描いた物語だということが分かりますね。最近の絵本ではかなり可愛らしい絵柄の絵本になっています。

    『ヘンゼルとグレーテル』原作のグリム童話とは

    原作となっているグリム童話。名前や物語のあらすじくらいは聞いたことがあるけれど、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。

    ドイツのヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟が編纂した童話集。『ヘンゼルとグレーテル』などの物語の元々の内容は、さきほど紹介したあらすじのようなものではありませんでした。

    事実をありのまま伝えるという研究書のような内容が子ども向きでないということで、残酷な描写がカットされた作品のあらすじが、現在一般的に広まっているグリム童話として存在しているのです。

    グリム童話は子供向けのお話として楽しまれているだけではなく、当時のヨーロッパの風俗を知るための資料としても扱われています。

    グリム童話原作の『ヘンゼルとグレーテル』はもっと恐ろしかった!

    分かりやすく原作と最近の『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじの違いを比較してみましょう。

    原作とここが違う!『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじ①

    原作でヘンゼルとグレーテルを捨てるのは、継母ではなく実の母親。実際の母親が読んだ時に猛抗議が起こったそうです。

    原作とここが違う!『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじ②

    優しい印象で描かれることの多いお父さんですが、原作では気の強い母親に押し負けて、ヘンゼルとグレーテルを捨てることを強行されてしまいます。実の父親であれば、子どもを守って欲しいところです。

    父親を擁護するために、継母を悪者役に仕立て上げたのかもしれませんね。

    原作とここが違う!『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじ③

    原作のあらすじでは、グレーテルが魔女をカマドに押し込んで倒す時、魔女が母親の顔に見えるという描写があります。自分たちを捨てた母親を殺すという隠喩の表現が、現在の絵本などではカットされています。

    原作とここが違う!『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじ④

    原作のあらすじで描かれるお菓子の家は、壁がレープクーヘン、屋根はお菓子、窓は透き通った砂糖で作られていると記述があります。最近の絵本のイラストでは、雑多に描かれることが多いです。

    原作とここが違う!『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじ⑤

    原作では、ヘンゼルとグレーテルが家に帰った時、理由は明らかではありませんが、母がいなくなっています。最近の児童書では、家に帰った時には継母が死んでいたり、あるいは継母と仲直りをして家族皆で仲良く暮らすというエンディングもあります。

    あらすじだけを比べてみても、原作と最近の児童書として改変されたものとでは大分内容が違います。

    原作のあらすじで振り返る「ヘンゼルとグレーテル」

    なぜ母は子どもを捨てた?

    あらすじを読むと、まず実母と継母という違いがあります。継母ならまだしも、なぜ実の母にヘンゼルとグレーテルは捨てられなければならなかったのでしょうか。

    物語が作られた時代背景には、飢饉があった

    食べ物が少なく、生きるために実の母親でも子どもを捨てるという『ヘンゼルとグレーテル』の物語のような出来事が、実際に起こっていたのです。

    母=魔女と思われるような描写

    原作では、母の顔に見えた魔女をグレーテルが倒すというあらすじになっています。これは、捨てられた親からの自立、子どもの成長を描くシーンだという解釈もあります。

    母の失踪

    原作のあらすじでは、ラストの母の失踪について明らかになっていません。飢饉で飢えて死んでしまったのか、あるいは母は本当に魔女だったのか。さまざまな解釈がされています。

    原作のあらすじを読んでみると、原作のヘンゼルとグレーテルには「母」という存在が絡み合っているということが分かります。

    子どもにとって「母」とは

    小さな子どもにとって絶対的な存在である母親に捨てられること、そして魔女を倒すということの意味など、あらすじだけでも原作の「ヘンゼルとグレーテル」には深い意味が込められていそうです。

    『ヘンゼルとグレーテル』あらすじまとめ

    原作のあらすじとの比較を行いましたが、いかがでしょうか?日本でよく知られる最近の『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじのイメージとは大分違いがあったのではないでしょうか。

    原作のあらすじを読んで、単に怖い話だと思わないで下さい。物語の背景には、飢えと貧しさでそうせざる負えない理由があったのです。

    『ヘンゼルとグレーテル』は生きて帰って来れましたが、現実に捨てられた子どもたちは何人も飢え死にしてしまったことでしょう。

    お菓子の家は、当時の子どもたちにとっても夢のような存在だったはず。「ヘンゼルとグレーテル」のような子を生み出さないためにも、貧しさや飢えを回避しなければならないという、深い意味も込められているのではないでしょうか。

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