記事ID71066のサムネイル画像

    今が読みどき!江戸川乱歩の『人間椅子』から始めてみる読書のススメ

    『人間椅子』?不思議なタイトル…。江戸川乱歩って昔の小説家だし、ちょっと難しそう?実は、現代の私たちが読んでもゾクゾクする魅力がたくさんあるんです!江戸川乱歩を知らない人はもちろん、読んだことのある人も今一度、代表作である『人間椅子』から本を開いてみませんか?

    『人間椅子』や『怪人二十面相』などの名作を量産!江戸川乱歩ってこんな人

    プロフィール

    江戸川乱歩(1894~1965)

    1923年(大正12年)、『二銭銅貨』でデビュー。大正、昭和初期にかけて、『D坂の殺人事件』
    、『人間椅子』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』などを執筆。
    戦後は推理小説の評論執筆や、江戸川乱歩賞の設立など、1965年(昭和40年)に70歳で没するまで、精力的に活動した。

    ゾクゾク!『人間椅子』の魅力

    江戸川乱歩の『人間椅子』…タイトルだけは聞いたことある!

    人間と、椅子。確かに私たちは必ずと言っていいほど、日常で椅子を使います。しかし普通ならば繋げるような単語ではありません。
    一体『人間椅子』とはどんな小説なのでしょうか。
    読んでいるうちに背筋がじわじわと寒くなっていく、『人間椅子』の魅力をご紹介します。

    『人間椅子』、実は映画化もされていた!

    でも、活字から入るのは苦手…日常的に本を開かない…という方は、映画『人間椅子』から入ってみてはいかがでしょうか。『人間椅子』はなんと1997年、2007年に映画化されているんです。

    2007年の映画『人間椅子』

    原作 江戸川乱歩
    監督 佐藤圭作
    脚本 佐藤圭作  武井彩
    出演 宮地真緒 小沢真珠 板尾創路 他

    編集者などの登場人物を追加し、妖しく恐ろしい『人間椅子』の世界を新たな視点から魅力的に描いています。

    1997年の映画『人間椅子』

    原作 江戸川乱歩
    監督・脚本 水谷俊之
    出演 篠崎佳子 國村隼 山路和弘 他

    原作に新たな解釈を加え『人間椅子』のその後まで映している作品です。

    気になる原作、『人間椅子』のあらすじ

    『人間椅子』のあらすじ

    女性作家である佳子は、ある日手紙を受け取る。
    ファンレターか、もしくは原稿を読んでほしいという作家志望の若者からの手紙かと思い、何気なく読み進めていく佳子。しかし、その内容は恐ろしい犯罪の告白だった。
    手紙を書いた「私」は、椅子専門の家具職人。醜い容貌をしているため人に嫌われているが、椅子作りの腕前だけは認められていた。
    ある日、彼はふと思いついたことを実行する。作った椅子に人が一人入れる空洞を開けて、自分が中に入り込む「人間椅子」を作り出すというものだった。
    彼の入った椅子はホテルのロビーに運ばれ、あらゆる人が座る。盗みをはたらくために椅子に入っていた彼だったが、いつしか人の重みを感じることに喜びを感じ始める。
    彼の「人間椅子」は発覚することなくホテルから売却され、買い取られ、佳子の家へと運ばれることとなる…。
    手紙を読んで恐怖を募らせる佳子だったが、物語は意外な結末を迎える。

    これさえ読んでおけば江戸川乱歩通!?『人間椅子』の他にも魅力的な作品がたくさん

    新潮文庫 『江戸川乱歩傑作選』

    当時日本を驚かせたミステリー小説の数々が載っています。『人間椅子』も収録されていますが、『人間椅子』以外のあらすじもいくつか、ちょっとだけご紹介します。結末はぜひ、ご自分の目で確かめてみてください♪

    『二銭銅貨』

    「私」と松村は下宿で貧乏に暮らしていたが、ある日新聞で強盗事件が起こったことを知る。工場の給料が丸ごと盗まれたというのだ。間もなく犯人は逮捕されるが、金のありかは分からずじまい。ある夜「私」が何気なく部屋の机に置いた二銭銅貨から、松村は強奪された金のありかを探っていくが…。

    ※二銭銅貨のイメージ

    江戸川乱歩の活躍した大正時代から昭和時代には、円よりも下の銭が多く流通していました。
    現在でもドルやユーロを円に替えるときなどに文字を目にしますね。

    『D坂の殺人事件』

    喫茶店で明智小五郎と出会った「私」は明智と談笑を始めるが、喫茶店向かいの古本屋の様子がおかしいことに気が付く。なんと古本屋の妻が殺されていたのだ。独自にこの事件を推理する「私」は、ある意外な結論に辿り着き、後日明智の家を訪ねることになる。

    『D坂の殺人事件』は映画化もされました。

    公開 2015年
    原作 江戸川乱歩
    監督・脚本 窪田将治
    出演 祥子 河合龍之介 他

    後述する作品『心理試験』もの内容も取り入れた映画となっています。

    ※D坂のイメージ

    江戸川乱歩は直接言及していませんが、「D坂」は文京区千駄木にある団子坂をモデルにしていると言われています。

    『心理試験』

    苦学生の蕗屋は、金を家に貯め込んでいるという老婆の殺害を決意し、知り合いの斎藤に罪をなすり付ける計画をたてる。計画は成功し、斎藤は逮捕された。予審判事の笠森は「心理試験」の手法で、蕗屋にさまざまな質問をして、嘘をついていないか反応を観察する。しかし蕗屋は予め質問に答える準備までしておいたので、疑われずに済んでいた。笠森が明智小五郎を呼ぶまでは…。

    『屋根裏の散歩者』

    郷田はあらゆることに興味が持てず、退屈な日常を送っていた。ある日、自分の住んでいる下宿の押入れの天板が外れ、屋根裏に行けることに気が付く。初めのうちは、板の節目から下宿の住人の生活を観察することを楽しんでいたが、ある時恐ろしい殺人の計画を思いついてしまう。

    『屋根裏の散歩者』は映画化もされました。

    公開 2006年
    原作 江戸川乱歩
    監督 三原光尋
    脚本 井土紀州
    キャスト 嘉門洋子 窪塚俊介 他

    設定は現代に、主役も女性になっています。ぞっとするような展開は、『人間椅子』に通じるものがあるかも…!?

    『怪人二十面相』シリーズ

    『怪人二十面相』

    江戸川乱歩の代表作と言っても過言ではない作品。
    誰もが映画やドラマなどで一度は耳にしたことのある探偵、明智小五郎が、二十人の顔を持つという解答、怪人二十面相と対決するシリーズものの話です。
    子ども向けの小説として人気を博しましたが、現代の私たちが読んでもドキドキするような展開が繰り広げられています。
    『人間椅子』や『芋虫』などの、ちょっと不気味な物語が苦手な方にはオススメかも…!?

    江戸川乱歩が亡くなってから50年

    実は重大!没後50年の意味とは

    小説などの著作物は、作り手以外が許可なく作品を使用して、不当に利益を得たりしないように著作権で守られています。
    著作権は、作者が死去してから50年間守られると著作権法で定められています。

    江戸川乱歩は1965年に没したので、50年後、つまり2015年まで著作権がありました。
    2016年に著作権保護期間が終了したことによって、青空文庫が作品を公開し始めました。

    続々!綺麗な新装版で読む江戸川乱歩

    江戸川乱歩の没後50年という節目の年に合わせて、新たなデザインの表紙の版が発売されたり、今人気の作家とのコラボがされていたりします!
    綺麗な表紙だと、持ち歩いてみてもちょっとオシャレな気分になっていいかも?
    気になる作品があったら本屋で手に取ってみてください。

    角川ホラー文庫より

    『黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション(5)』
    社交界の花形である美女は、実は黒蜥蜴という通称を持つ盗賊だった。黒蜥蜴は国宝級のダイヤを狙って、名探偵明智小五郎と対決する。

    黒蜥蜴は戯曲化、映画化もされました。

    画像は1968年の映画のもの。
    主演は丸山明宏(現・美輪明宏)でした。

    文豪・三島由紀夫が江戸川乱歩の『黒蜥蜴』をもとに戯曲化をし、丸山明宏は舞台、映画で主役を務めました。

    角川ホラー文庫より

    『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション(6)』
    売れない小説家の人見は、自分と顔が瓜二つの大富豪、菰田の病死を知る。彼になりすますことを決めた人見は、かねてから思い描いていた美しくてグロテスクな理想の島を、多大な財産を投じて作るが…。

    角川ホラー文庫より

    『孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7)』
    蓑浦は婚約者である初代を何者かに殺されてしまう。初代は謎の古い系図帳を遺していた。生前の初代に求婚していた諸戸と蓑浦は謎を解こうとするが、恐ろしい体験をすることになる。

    角川ホラー文庫より

    『蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション(8)』
    好きになった女性ばかりを狙う殺人鬼の蜘蛛男を捕まえるために、畔柳博士と明智小五郎が奮闘する。息もつかせない展開の連続。

    岩波書店より

    『幽霊塔』江戸川乱歩 原作 宮崎駿 カラー口絵
    叔父の買い取った屋敷を下見に来た光雄は、屋敷の時計塔で野末秋子と出会う。謎の多い彼女に惹かれるうち、光雄は事件に巻き込まれ、過去に塔で起こった事件までも知ることになる。

    日本を代表するアニメ監督である、スタジオジブリの宮崎駿が口絵を手がけました。
    表紙を描いただけではなく、幽霊塔の内部もイラストで解説しています。
    文章だけでは分かりづらい塔の構造がよく分かって、作品がもっと面白くなります。

    リブレ出版より

    『江戸川乱歩傑作集2 人間椅子 屋根裏の散歩者』
    (『人間椅子』『屋根裏の散歩者』のあらすじは前述したため省略します。)

    挿画を手掛けるのは咎井 淳。アメコミで活躍しているイラストレーターが、妖しくも美しい江戸川乱歩の世界を見事に表現しています。

    いかがでしたか?

    『人間椅子』を中心に江戸川乱歩の作品を見てきました。
    ミステリーというジャンルを日本に取り入れ、人気を得た江戸川乱歩の魅力が少しでも伝われば幸いです。
    これをきっかけにして、『人間椅子』だけではなく江戸川乱歩のさまざまな作品に、ネットや本屋で触れてみてはいかがでしょうか。

    TOPへ